秘密の地図を描こう
95
こうしてみると、ギルバートの家の敷地はかなり広い。しかし、ラクスが以前住んでいた家も同じくらいの広さだったような気がする。
「プラントって、どこでもこうじゃないよね?」
やはり、お金持ちだから……なのだろうか。そんなことを呟きながら、自室へと向かう。
「それにしても、やっぱり、体力、落ちているね」
昔からインドア派だったが、もう少し体力があったような気がする。キラはそう呟いてしまう。
「だからといって、無理をするものではないよ」
そのときだ。いきなり背後から声をかけられる。
「無理と言っても……少し庭を歩いてきただけですよ?」
慌てて言い返しながらキラは振り向く。その瞬間、思わず目を見開いた。
「ラウさん?」
彼が身にまとっているのはザフトの軍服だ。
「ザフトに?」
しかし、大丈夫なのだろうか。そう思いながら問いかける。
「完全にではないよ。不本意だが、体のことを口実にして、相談役と言うことでの復帰だ」
面倒くさい、と彼はため息をついた。
「あの男が適当にごまかしてくれたからね。指揮権を持たないと言うことで妥協してくれたようだよ」
その分、こき使われそうだがね……と彼は続ける。
「そう言うことだから、出かけてくるよ」
だからおとなしくしているように、と口にしながら髪をなでてくれた。
「僕は子供じゃないですよ?」
そう言うことはもっと小さな子供にしてあげてください、とキラは言い返す。
「私の目から見れば、君も十分子供だよ」
苦笑とともにラウは口にした。
「今日はあの男も早めに帰ると言っていたからね。一緒に夕食にしよう」
お客様も来る予定だよ、と彼はさりげなく続ける。
「お客様、ですか」
いったい誰だろう、とキラは思う。
それよりも、と口を開く。
「僕も同席していいのですか?」
自分はうかつに表に出ない方がいいのではないか、と疑問をぶつけた。
「君も知っている相手、だそうだよ」
本当かどうかはわからないが、とラウは言う。
「……でも、ギルさんが全くの嘘を言うわけがないですし」
たぶん、どこかですれ違っている相手なのではないか。キラはそう判断する。
「まぁ、そうだね」
そういうことにしておこう、と彼はうなずいた。
「そうそう。あと一時間もすればニコルが来る手はずになっている。だから、無理をしようとしてもばれるからね」
本当に小さな子供に対する言動だ、と思わずにいられない。
「どうして、そう言うことになるんですか?」
ニコルだって忙しいのではないか、と言外に付け加える。
「君のそばに誰もいなくなるからだよ」
決まっているではないか、と当然のように彼は言い返してきた。
「ニコルもむしろ進んで『来る』と言っていたそうだよ」
だから気にしなくていい、とも付け加える。
「……過保護です。僕は一人でも大丈夫なのに」
「君の『大丈夫』は信用できないからね」
自分の言動が悪いのだから、あきらめなさい。そうも言われてしまう。
「では、いってくるよ」
最後に肩を軽く叩くとラウはきびすを返す。
彼までもが呼びされると言うことは、それだけ状況が悪いのだろうか。それとも、と思わずにいられない。
「ニコルに聞いたら教えてくれるかな?」
キラは小さな声でそう呟いていた。